農と共に歩む酒造り

Sake that conveys the taste of rice

米の旨みが伝わる酒とは

お酒を造る上で欠かせないお米は、地域の生産農家の方々に御願いをして作って頂いています。 
米作りの場を知り、生産農家の方々を知る中で、様々なことが見え、美吉野醸造としての酒造りの在り方が決まってきたと感じています。

お米の生産方法に合わせた酒造り

美吉野醸造では、有名な酒米の品種に依った画一的な酒造りではなく、『奈良・吉野の風土に寄り添う酒造り』を行っています。
『自然な発酵による解放した酸に負けない、米の旨みが伝わるお酒』を醸すためには、『生産農家の方々がその土地を活かして米を作る考えや思い』を汲み、その上で『お米の生産方法に合わせた酒造り』を行う必要があります。

地元の生産農家の方々は実際、様々な環境の圃場で栽培をされています。 
山間部の涼しい寒暖差の大きな圃場で作られる方、開けた平野部の寒暖差が少ない穏やかな圃場で作られる方。ある意味両極端な米作りをされています。 
圃場も変れば必ず米質やそれぞれの美味しさは違うはずです。

山間部
平野部

山間部の米・平野部の米 それぞれを活かす

山間部で作られる稲は、かけ流しの山水が用いられ、冷たい水でゆっくりとした成長を促されます。日照時間も短く、気温の寒暖差もあります。それにより、稲はゆっくりじっくり育ち、環境に磨かれた美味しいお米が出来ます。

反対に、平野部で作られる稲には、ため池の水や、温暖な吉野川分水の水が用いられます。日照時間は長く、寒暖差もあまり激しくありません。
稲はぐんぐん育ち、実りも多く、収量も期待できる美味しいお米が出来ます。

『山間部の生産農家の方』と『平野部の生産農家の方』では、美味しいお米の基準や作り方の違いがあり、それぞれ米質の違いが生まれます。 
ただ品種だけで一括りできない、生産農家の方々と圃場の違いが大きく酒米の質に関わっていることがご理解いただけるかと思います。

特長ある米を活かす醸造技術

現在、地元で10件程の生産農家の方々にお米を作って頂いています。
環境の違いだけでなく、年度によっても米の特徴が違います。
米の特性を理解し、米の個性に合わせた酒造りのため、生産農家さんのそれぞれの圃場ごとに精米した上、圃場ごとに米洗いをし、きめ細かい吸水率の調整を行うなど、さまざまな方法を模索しています。

酒造り期間中、毎日の吸水率の微調整を重ね、その米や目的とする酒質にあった吸水率に出来る限り寄せていくことで、『理想の蒸しあがりに近づき、理想の麹づくりに近づき、理想の醪に近づけていくこと』が酒造りの技術であると思っています。

農業と共に歩む酒造り

毎年の天候により農産物は大きく質が左右されます。
均一化された原材料が一番造りやすいのは事実ですが、原材料が農産物である以上、良い時も悪い時もあります。
天候の変化は防ぎようがありませんが、日本酒は多くの工程があるおかげで、その年の米の出来や気候を加味しながらそのブレを修正し、目指す結果に近づけることができる余地があります。
並行複発酵という複雑な発酵形態を持つ『米の酒』である日本酒だからこそ、農業と共に歩めると考えております。